こんにちは。WEB集客プランナーの谷口慎治です。

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谷口慎治
今回は、レッドブルのコンテンツマーケティングの特徴と、そこから見えてくるコンテンツマーケティングの成功法則について考えていきます。

2019年には世界で75億本を売り上げたレッドブル。

レッドブルと言えば、エクストリームスポーツの動画コンテンツですね。

※エクストリームスポーツとは、速さや高さ、危険さや華麗さなどの「過激な (extreme)」要素を持った、離れ業を売りとするスポーツの総称。

(出典:wikipedia

普通の飲料メーカーであれば、ドリンクをおいしそうに飲むような動画コンテンツを作るところですが、レッドブルの動画コンテンツには商品が出てこないことで有名です。

なぜ商品を宣伝しないコンテンツで1年間に75億本も売れるのか?

その秘密を解き明かしてみたいと思います。

ところで、日本ではモンスターエナジーがレッドブルの売上を抜いたみたいです。

(出典:日経XTREND

しかし世界ではレッドブルの売上は約61億ドル(2018年)なのに対し、モンスターエナジーは約33億ドル(2017年)です。

(出典:wikipedia)
(出典:モンスタービバレッジ・コーポレーション

モンスタービバレッジ社はその他の飲料も販売しているので、すべてがモンスターエナジーの売上ではありません。

レッドブルは日本での販促にあまり力を入れているように感じないので、レッドブルが日本向けにコンテンツマーケティングを仕掛けたら、モンスターエナジーを抜くかもしれませんね。

話がそれましたが、レッドブルのコンテンツマーケティングの特徴と、なぜレッドブルはコンテンツマーケティングで成功したのか、その理由についてみていきましょう。

レッドブル・マーケティングの4つの特徴

まずはレッドブルのマーケティングの特徴についてです。

1.3分の1ルールを適用

レッドブルは年間総売上額の3分の1をマーケティングに投資する「3分の1ルール」を定めているそうです。

売上の3分の1ってかなりマーケティングに力を入れている証拠です。

日本の企業では、売上に対する広告宣伝費(販売促進費)の比率・割合は業種によって違いますが、例えば通販・サービス業で15~20%というデータがあります。

(出典:販促の大学で広告・マーケティング・経営を学ぶ

それと比較してもマーケティングに相当なコストをかけていることがわかります。

それもマス広告に使うのではなく、動画コンテンツに投資しています。

2.レッドブル社はメディア企業である

レッドブル社は自分たちを次のように定義しています。

We are media company happened to sell drink.

「私たちは飲料を販売しているメディア企業だ」

レッドブル社のフェイスブックページには2020年7月現在、4,800万人以上のフォロワーがいますが、彼らは自分たちの業種を「マスコミ」としています。

(出典:FACEBOOK)

レッドブルは飲料を売るためにコンテンツを配信しているわけではなく、企業ブランディングのためにコンテンツを制作・配信しているのです。

だからこそ、最初に書いたように、レッドブルは動画コンテンツの中に商品を出さないのです。

3.見込客を集めるのではなく、見込客の元に出向く

コカ・コーラなどの大手飲料メーカーは大きなイベントに広告を出すなど、マス広告に頼ることが普通ですが、レッドブルは違います。

マス広告を使うということは、企業の都合で発信する情報に反応する人を集めるということです。

つまり、たくさんの人に同じコンテンツを投下して、その中で興味を持つ人だけが見込客になります。

レッドブルは逆です。

見込客を集めるのではなく、自ら見込客が集まりそうな場所に出向いていきました。

レッドブルは1987年にエナジードリンクの販売を始めました。当初からレッドブルはマス広告を使いませんでした。飲料メーカーとしては後発だったため、同じようにマス広告を使っても先発企業に勝てないと思ったのかもしれません。

レッドブルは「翼を授ける」というブランドメッセージを持っていますが、そのメッセージに反応する層を10代後半から30代の男性と定めました。

そして彼らが集まりそうなパーティーやカフェなどでサンプルの配布や販売を行っていました。

それが今ではエクストリームスポーツの愛好者がターゲットになっているのです。

確かに「翼を授ける」というブランドメッセージとエクストリームスポーツは相性が良さそうです。

インターネットの発達とともに、今では、エクストリームスポーツの愛好者を集めるための動画コンテンツを制作しているというわけです。

4.マス広告を使わずに見込客を集める

大手飲料メーカーが有名イベント(オリンピックなど)に広告を出すのに対して、レッドブルは自分たちでイベントを開催します。

これはレッドブルのブランドメッセージを受け取ってくれる可能性の高い見込客を集めるために有効な方法です。

既存のイベントに広告を出すと、集まる人たちの頭はそのイベントのイメージで占められます。そうするとレッドブルが伝えたいメッセージが伝わらない可能性があります。

しかしレッドブル独自のイベントを開催すれば、参加する人たちの属性をコントロールできます。

コミケイベントを開いても、おそらくレッドブルを好む層は集まらないでしょう。

しかしスポーツイベントを開催すれば、レッドブルを愛好してくれるようになる見込客を集める可能性が高くなります。

しかも参加した人と一緒にイベントを作りあげる一体感を醸成することで、より濃密なブランド愛好者を育てることができるようになります。

以上、レッドブルのマーケティングの特徴を4つあげてみました。

レッドブル・コンテンツ4つの事例

次に具体的にレッドブルがどんな動画コンテンツを作っているのか、その事例を4つ紹介します。

2011年8月23日 ブレイクダンスのコンテンツ

バッハの曲に合わせてブレイクダンスを披露するという異色のパフォーマンス。

ブレイクダンス世界チャンピオン「フライング・ステップス」と、世界を舞台に活躍するコンテンポラリー・ダンサーの川口ゆいのコラボです。

これはレッドブルが開催したイベントですが、ターゲットにしているのは、もちろんブレイクダンスの愛好者たちです。

ブレイクダンス愛好者にとって、バッハとブレイクダンスなんてまさに両極端に位置するものでしょう。

しかしここにはレッドブルの緻密な戦略があるように思います。

両極端を融合する、つまりレッドブルを飲めば「何でもできる!」というメッセージを伝えたいのではないかと勘繰ってしまうのです。

まさに「翼を授ける」のブランドメッセージを見事に表現していると思うのですが、いかがでしょう?

ちなみにこの動画コンテンツはレッドブルのコンテンツにしては珍しく、レッドブルを飲む様子が描かれています。

10年近く前には、このような直截的な表現もあったんですね。貴重なコンテンツかもしれません。

2013年5月8日 スポーツバイクのコンテンツ

パキスタンでのスポーツバイクによるスタントライディングのコンテンツです。

帽子などにレッドブルのロゴがある程度で、通常はレッドブルの露出はこの程度です。

さきほど紹介した「Red Bull Flying Bach European Tour 2011」では、レッドブルを飲むシーンがありますが、この動画コンテンツにはありません。

これもクールな映像コンテンツですね。

2017年9月14日 パルクールのコンテンツ

2,700万回以上再生されている日光江戸村でのパフォーマンスを収録したコンテンツ。

「パルクール」というスポーツをご存じでしょうか?

パルクールとは、走る・跳ぶ・登るといった移動に重点を置く動作を通じて、心身を鍛えるスポーツ(運動方法)です。ただし、パルクールが包括しているフィールドは非常に幅広く、スポーツ(運動方法)という言葉だけで表現できるものではありません。 現在、パルクールは日本を含め世界中で様々なスタイルで実践されており、移動術、トレーニングメソッド、パフォーマンス、アート、ライフスタイルや哲学など パルクールの捉え方は多岐に渡っています。

(出典:パルクールとは

私もレッドブルのコンテンツマーケティングについて調べるまで知りませんでした。

パルクールはフランス発祥のエクストリームスポーツです。

この動画コンテンツに登場するのはパルクールのトップアスリートとして君臨するジェイソン・ポールです。

パルクールはスポーツ競技として世界大会も開催されていて、ジェイソン・ポールは世界大会で何度も優勝している人物です。

ジェイソンもすごいけど、日本の忍者もスゴイですね。思わず見入ってしまいました。

(これは、レッドブルのコンテンツマーケティングの思うつぼってやつですね)

2020年5月20日 マウンテンバイクのコンテンツ

こちらはドキュメンタリー形式でストーリー性に優れた動画コンテンツです。

5歳でマウンテンバイクを始めたフランス人女性・ポーリーヌ・フェラン・プレヴォが主人公。

マウンテンバイクの大会で全国2位になったときにメダルを投げ捨てたくらいの負けず嫌い。

22歳でマウンテンバイクワールドカップ優勝。

ケガで一度は情熱を失った彼女がカムバックしてチャンピオンになった後のインタビュー動画です。

最近の動画はエクストリームスポーツそのものよりも、登場人物の物語を語るものが増えているような気がします。

そのほうが共感しやすいので、これもレッドブルの戦略でしょう。

以上、レッドブルの動画コンテンツ4つを紹介しました。

これらは言語を超えて、ファン作りに貢献するコンテンツだと感じませんか?

レッドブル・コンテンツマーケティングから学べる成功法則

では、最後にレッドブルのコンテンツマーケティングがなぜここまでの成功を収めたのかについて考察したいと思います。

レッドブルのコンテンツは「動画」が中心です。

YouTubeが一般的になって動画コンテンツが気軽に発信できるようになりました。

そのせいか、コンテンツを量産していけばOKというコンテンツマーケティングを展開する企業も増えているように感じます。

YouTubeに1分動画を大量投稿するとかはその典型でしょう。

これって、動画を投稿すること自体が目的になっているような気がしてなりません。

しかし、考えなければならないのは、なぜ動画コンテンツを投稿するのか、もっというと、コンテンツマーケティングの目的は何か、ということです。

コンテンツマーケティングの目的は下記の記事でも解説している通りです。

なぜコンテンツマーケティングが必要なの?理由・目的・成功戦略を解説

コンテンツマーケティングの目的は、①リードの獲得、②ロイヤリティの向上、③ブランディング、です。

レッドブルのコンテンツマーケティングがすごいと思うのは、上記の記事であげた3つの目的を超えています。レッドブルはコンテンツマーケティングによって顧客を創造しようとしているのです。

かつてピーター・ドラッカー教授が言われた通り、企業の目的は「顧客の創造である」ということを地で行く見本のように思います。

レッドブルの動画コンテンツはいずれもエクストリームスポーツの愛好者を集めるものです。

ひとつひとつのエクストリームスポーツ愛好者のコミュニティに入り込み(もしくは作り上げて)、潜在顧客である彼らとのつながりを作っているのです。

レッドブルのYouTubeチャンネルは2020年7月現在、946万人のチャンネル登録者がいます。

(出典:RED BULLチャンネル

彼らはレッドブルに興味があって登録したわけではないでしょう。

たまたま見つけた動画が、自分の愛好するエクストリームスポーツだった。

このチャンネルを作ったのは誰かと見てみると、「RED BULL」チャンネルとなっている。

「レッドブルって何だ?」ってなった人も多いと思うんですよね。

しかも動画を見ても、商品の販促臭はまったくしない。

そりゃ、気になりますよ。レッドブルって何だって。

レッドブルがもし、これら動画コンテンツの中で飲料の広告宣伝をしていたらどうでしょう?

ここまでチャンネル登録者が増えたでしょうか?

ちなみにCoca-ColaのYouTubeチャンネル登録者は341万人です。

(参考:コカ・コーラYouTubeチャンネル

レッドブルはレッドブル飲料のファンを集めてコミュニティを作るという一般的なやり方をしませんでした。

レッドブルが好きだという人のコミュニティを作ったとしても、チャンネル登録者946万人とはならないでしょう。

レッドブルは、自社を好きになってくれそうな人たちが集まるコミュニティを作り、そこで商品の宣伝をするのではなく、コミュニティメンバーとのコミュニケ―ションをメインに考えているのです。

●一緒にこのイベントを盛り上げよう!
●このエクストリームスポーツを応援しよう!

レッドブルの動画コンテンツから感じるのはこのようなメッセージです。

レッドブルは動画コンテンツによって、集客できればいいと考えるような浅い戦略をとっていないのです。

ここに、レッドブルから学べるコンテンツマーケティングの真髄があると思うのです。

つまり、コンテンツマーケティングで目的とすべきは、見込客を集めることではなく、顧客を創造することだと。

遠回りなようで、実は長期的な成功をもたらすコンテンツマーケティングを実践しているのがレッドブルなのです。