こんにちは。WEB集客プランナーの谷口慎治です。
海外企業のコンテンツマーケティング成功事例として、今回はLEGO社を取りあげて、特徴と成功要因を考えていきます。
レゴ(デンマーク語: LEGO)は、デンマークの玩具会社、およびプラスチック製の組み立てブロック玩具のブランドである。1934年に「よく遊べ」を意味するデンマーク語「leg godt」から社名をLEGOとした。
(出典:ウイキペディア)
結論を先に述べておくと

LEGO社のコンテンツマーケティングの特徴は
1.ストーリーを売る
2.消費者巻き込み型
成功要因は
●上記の特徴によって導かれる、圧倒的な顧客ロイヤリティの向上
私はこのように解釈しています。
以前、レッドブルもコンテンツマーケティングの成功事例として取り上げましたが、消費者を巻き込むという点において、LEGO社はレッドブルを凌駕していると思います。
こんなコンテンツマーケティングを展開できれば、「そりゃ、ファンは増えるよね」と誰もが納得するでしょう。
何か真似できることがないか、LEGO社のコンテンツマーケティングのポイントを見ていきましょう。
LEGO社のSNSフォロワー状況
コンテンツマーケティングが成功しているかどうかの判断は次のような数字で見ることができます。
・売上、利益などの損益情報
・ブログのPV、コンバージョン率
・SNSのフォロワー数
コンテンツマーケティングの真の目的は会社の成長ですから、売上・利益の推移を見るのがいいと思います。
しかしアウトバウンドマーケティング(≒広告)も併用している企業では、コンテンツマーケティングの影響がどれくらいなのかは、企業の「中の人」じゃないとわかりません。
しかもLEGO社は非上場ですから、ますます損益情報はわかりません。
ブログのPV、コンバージョン率もアナリティクスを見れる「中の人」じゃないとわかりません。
ということで、SNSのフォロワー数でLEGO社の状況を確認してみます。
(SNSのフォロワーが多いからといって、必ずしもコンテンツマーケティングによる売上向上を達成しているとは言えませんが、ビジネスアカウントのSNSフォロワー数と売上はだいたい比例するでしょう)
YouTube
2020年7月現在、LEGO社のYouTubeチャンネル登録者数は955万人。
動画は2万本投稿されています。

LEGO社のYouTubeチャンネルは、メインターゲットである子どもが楽しめるコンテンツを中心にしています。
スターウォーズシリーズなど、シリーズ展開されているコンテンツが多く、チャンネルの中でも特定のシリーズのファンという人が多そうです。
インスタグラム
2020年7月現在、フォロワー約590万人。業種は違いますが、世界のマクドナルドのインスタフォロワー数が383万人ですから、LEGO社のフォロワーがいかに多いかがわかります。

地味にインスタ映えするんですよね。次に紹介するフェイスブックでもそうですが、インスタグラムでも若い母親をターゲットにしているようです。
フェイスブック
フェイスブックページのフォロワー数は1,370万人です。

フェイスブックも母親層をターゲットにしています。フェイスブック広告のターゲティング機能を使い、世界中の何百万人もの母親にメッセージを配信して成功したようです。
フェイスブックでは、ファンからオリジナルの作品を募集するコンテスト企画が頻繁に開催されています。
子供たちが作ったレゴの投稿にコメントを返すことでLEGOファンとのコミュニケーションを図っています。
twitterのフォロワーは71万人ほどなので、他のSNSと比べて、そこまで力を入れていないのかなという感じです。

このようにLEGO社では各SNSでコンテンツを発信しています。
LEGO社コンテンツマーケティングの特徴
LEGO社は非上場ではありますが、ネットや出版されているLEGO関連の書籍を見ると、優良企業という印象です。
しかし、実は2004年に約3億ドルの大赤字を記録して倒産の危機にあったそうです。
そのことがこちらの本に書かれています。
レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理
そこから現CEOのヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏の手腕で驚異的なV字回復を遂げたそうです。
そのひとつの要因としてコンテンツマーケティングが果たした役割は大きかったのではないかと推測します。
では、LEGO社のコンテンツマーケティングの特徴について見ていきましょう。
1.ストーリーを売る
特に日本の企業に多いなと感じるのが、商品を機能で売ろうとする方法です。
しかし、レゴはただのブロックです。
超軽量ブロックとか、絶対に割れないブロックとか、赤ちゃんが誤飲しても大丈夫とか、そんな機能を追求したところで、売れる気はしません。
機能を追求する勝負は、結局は競合との価格競争になるのはどこの業界も同じです。
LEGO社は製品の機能ではなく、ストーリーを売っています。
例えば「ニンジャゴー」というシリーズ。
子供のためのニンジャのおもちゃです。「普通なら組み立てて遊ぼうね!」で終わりでしょう。
しかしLEGOは違います。
こちらの「レゴ(LEGO) ニンジャゴー 魔境のブリザード神殿」では、こんな商品説明がされています。
ロイド、コール、アキタとチームを組んで、戦いの準備だ! アジトを守る巨大なアイス・ドラゴンに注意しろ。クロスボウとディスクシューターからの攻撃をよけて、邪悪な敵たちと戦うんだ。捕まって氷の刑務所に入れられるな! ロイドと一緒にスピン術トルネードスピナーで戦って、氷の王国の真実をあばけ。敵からスピン術の巻物を取り戻して、冬を終わらせることができるか?
(出典:amazon)
子供たちはレゴを組み立てて遊ぶのではなく、お気に入りのキャラクターになり切って、物語の世界を遊ぶのです。
「レゴ ニンジャゴーはアニメにも、ゲームにも、映画にもなっています。
ストーリーを売るからこそのメディア展開です。
子どもは夢中になるよな~、うまいな~、と感じます。
もっと言うと、子供だけでなく、LEGOはスターウォーズシリーズなどで大人も虜にしています。
これがLEGO社のコンテンツマーケティングの特徴の一つ目、「ストーリーを売る」です。
2.消費者巻き込み型

LEGO社のコンテンツマーケティングの2つ目の特徴は「消費者を巻き込む」ことです。
別記事でも紹介していますが、レッドブルのコンテンツマーケティングも同じように消費者を巻き込んで成功しています。
【事例】レッドブルから学べるコンテンツマーケティング成功法則を解説
しかし、私の感想としては、消費者を巻き込むという点においては、LEGO社はレッドブルを凌駕しています。
ファンの作品をシェア
LEGO社はフェイスブックやインスタグラム、twitterなどのSNSを通じて、ファンが作った作品、アイディアをシェアしています。
「#LEGOFanoftheweek」というハッシュタグを添えて自分が作った作品を投稿すると、LEGO社は優れた投稿を自社のSNSアカウントで紹介してくれるんです!
自分の作品がLEGO社に認められるかも!というファンタスティックな気持ちで作品を作り、その作品が本当にLEGOのSNSで紹介されたら・・・
どれだけLEGO社へのロイヤリティが高まるでしょうか!
これは、現CEOであるヨアン・ヴィー・クヌッドストープの思想が反映された施策だと思います。
1998年に次のような出来事がありました。
「レゴ・マインドストーム」というプログラミングロボット教材を発売したのですが、発売から数週間でハッカーによって世界中にそのソフトウェアのコードが公開されてしまったのです。
そして何が起こったか?
LEGOファンのハッカーたちの仕業かわかりませんが、世界中のハッカーたちが「レゴ・マインドストーム」のプログラムを改良したのです。
LEGO社はこの状況を利用します。
ソフトの改変禁止をするのではなく、「ソフトを改良しても良い権利」をライセンスに盛り込みました。
最終的にこの製品は100万セット以上売れたヒット商品となりました。
社内の開発者だけでは到底達しえなかった数字です。
最強の社外開発担当
この状況を見たヨアンは、社外に開発協力者を作っていきました。
「レゴ社公認プロビルダー」の誕生です。
社員ではなく、ビジネスパートナーとして公認されている人たちです。
2018年時点で世界に16人しかいません。
彼らのLEGO社に対するロイヤリティも半端ないですよね。
彼らの存在もまた、LEGOファンにとって、「認められたい!」という想いを刺激する要因になっているでしょう。
このようにLEGO社は社内開発にこだわることなく、社外にもアイディアを求めていきます。
それがLEGOブランドへのロイヤリティを高める仕組みともなっています。
LEGO IDEASでファンを巻き込む
上記の「レゴ社公認プロビルダー」になるのは至難の業ですが、LEGO社がファンを巻き込む仕掛けは他にもあります。というか、こちらがファンを巻き込む仕掛けのメインでしょう。
LEGO社は「LEGO IDEAS」というウェブサイトを開設しています。
このサイトはファンが自分の作品を投稿したり、他の人が投稿した作品へ投票を行う機能があります。
そして投票数が1万を超えると、LEGO社のスタッフが審査して、商品化される可能性があるのです!
自分の作品がLEGOの商品として売り出される可能性があるということです!
これはファンのロイヤリティを高めるとともに、もう一つ重要なポイントがあるように思います。
それは消費者ニーズを把握すること。
ファンが投稿した作品の中で、多くの投票が集まる作品というのは、いわば市場ニーズが高い作品と言えるでしょう。
つまりLEGO社はリスクを最小限にして製品開発ができる仕組みということです。
コンテンツを通してファンのロイヤリティを高めるだけでなく、市場に投下しても売れないというハズレ商品のリスクを極力低減することができているわけです。
LEGO社のコンテンツマーケティングは深いなと感動するほどの仕組みです。
LEGO社コンテンツマーケティングの成功要因

これまで見てきたLEGO社のコンテンツの傾向から見えてくるのは、「徹底的にファンを楽しませる」という特徴です。
いかにファンのエンゲージメントを高めるかにすべてをかけているように見えます。
※エンゲージメント
ブランドに消費者が積極的に関与することで構築される、ブランドと消費者との間の絆のことをいう。
(出典:コトバンク)
新商品の紹介が目的であっても、「ここがおすすめポイント!」「メリットはこれ!」と購入を促進するわけではなく、LEGOの世界観(物語)を提供して、楽しんでもらった結果として、LEGOを好きになって欲しいという流れです。
好きになってもらえば、「買って!」と言わなくても、勝手に売れていきます。
これがLEGOのコンテンツ制作の大前提です。
そうして制作したコンテンツをターゲットにあったプラットフォームに投下しているように見えます。
フェイスブック、インスタ、twitterは母親がターゲット。こちらでは双方向性を重視し、LEGO社へのロイヤリティを高める参加型のイベントが数多く展開されています。
YouTubeは子供がターゲット。こちらは手間暇かけた動画コンテンツで、子供たちに物語を提供し、LEGOで遊ぶ中で子供たちはキャラクターを演じるイメージを楽しみます。
VR、ARではない、本物の空想世界を遊ぶ楽しみです。こういうのって子供の創造力を育てますね。
最後に一言でまとめると、LEGO社は商品を売っているのではなく、世界観を売っている企業ということができるでしょう。
世界観を形成して、それを売るというのは、なかなか難しいですが、顧客のロイヤリティを高めるためにインタラクティブなやり取りをするというのは、工夫して取り入れることができそうですね。
以上、LEGO社のコンテンツマーケティングについて考察してみました。